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​第17回 鳥取県作業療法学会

​社会との繋がりをつくるため,作業療法士にできること

2021年10月2日(土)
10:00-17:00
@Zoom

​学会長挨拶

写真【北山】_edited.png

 昨年度開催予定であった第17回鳥取県作業療法学会は、世界的に猛威を振るっている新型コロナウイルスの影響で延期せざるを得ませんでした。そして今年度は現在の感染状況を考慮して、初の試みとなるWeb開催にすることとしました。実行委員のメンバーは皆、このことを前向きに捉え、Web開催ならではの良い学会にするために活動を続けてきました。

 

 学会テーマを考える中で、私が日々の業務の中で最も気になっていることは、「患者は地域社会において社会参加が出来ているのだろうか」という点です。不謹慎かと思われるかもしれませんが、新型コロナウイルスを例えに出させていただきます。3密をさけるための緊急事態宣言やまん延防止等重点措置により、営業自粛やイベント中止により社会活動が止まり、コロナ自粛を強いられている方々は多くおられます。働く能力・遊ぶパワーはあるのに、それらを発揮できる場がないために様々な弊害が出ています。我々が普段関わっている患者は似たような状況にあるのではないでしょうか?入院中にリハビリによって獲得した能力も、退院後にそれを発揮する場がなくては、無為に過ごすこととなり、心身機能や能力は低下してしまいます。また退院後、通所リハや訪問リハといったサービスに繋げることはよくありますが、その目的が不明確な「リハビリ」となってしまうと、社会参加の為の関わりは難しくなってしまうと思われます。

 

 そこで学会テーマを「社会との繋がりをつくるため、作業療法士にできること」とし、急性期・回復期・生活期それぞれのセラピストに社会参加について考えてもらい、地域連携が強固なものになればと考えました。特別講演1では、文京学院大学の西方浩一先生に「共生社会実現のために作業療法士に期待すること」についてご講演頂き、それぞれの立場において作業療法士としてあるべき姿について考えられたらと思います。特別講演2では、こども相談支援センターゆいまわるの仲間知穂先生に「子どもと社会のつながりを作るためのOT の役割-学校作業療法-」についてご講演頂きます。また仲間先生はADOC-Sの開発にも携わっており、滅多に聞くことのできない興味深い話を聴くことができると思います。

 

 今回は初の試みとなり、十分でない事も多々あるかもしれませんが、精一杯頑張って作り上げた学会となります。実り多い学会となるために、多くの会員が参加して頂けることを心よりお待ちしております。

特別講演Ⅰ

Special lecture I

北山朋宏
​錦海リハビリテーション病院

特別講演Ⅱ

Special lecture II

「共生社会実現のために作業療法士に期待すること」
「子どもと社会のつながりを作るためのOTの役割 -学校作業療法-」
仲間知穂
YUIMAWARU株式会社
こどもセンター​ゆいまわる 代表
西方浩一
​文京学院大学
西方2.jpg

共生社会は,多様な人々を理解し,支え合い,他者と関わる活動を通して社会を変えていこうとする意識が全ての人に共有される社会である(中山, 2019)と言われています.共生社会を実現するために作業療法士は,どのような事が求められるでしょうか.本講演では,作業科学の視点から作業療法の専門性を示し,私が関わってきた医療的ケア児の家族および若年性認知症者の活動を紹介し,共生社会を実現するために作業療法士に期待することについてお話しします.

西方浩一(にしかた ひろかず)
1992年に専門学校社会医学技術学院作業療法学科を卒業し,緑成会病院,緑成会整育園にて作業療法士として成人,小児を対象とした作業療法に従事した.1999年城西医療技術専門学校講師,2006年に筑波大学大学院教育研究科で修士号,  2014年に聖隷クリストファー大学大学院リハビリテーション科学研究科で博士号を取得. 現在は文京学院大学保健医療技術学部作業療法学科准教授.  専門領域は作業科学,発達障害領域の作業療法.

 現在日本の教育は,誰もが人格と個性を尊重し支え合い、人々の多様な在り方を相互に認め合える共存社会の実現に向け「インクルーシブ教育」に積極的に取り組んでいます。インクルーシブ教育の目的は、人々の多様性を尊重し、障がいの有無に関わらず障がいのある者もない者も共に学ぶ中で、すべての子どもが精神的及び身体的な能力等を可能な最大限度まで発達できることで、自由な社会に効果的に参加することを可能とすることであり,その実現には学校教員を中心とした多職種連携が求められているのです。
 そんな中,作業療法士(以下,OT)は今後学校に必要な専門家として役割を担う可能性があります。私達OTには「作業に焦点を当てる」という多職種にはない視点を持ち,さらに「作業遂行を実現する」という専門的技術を持っています。
 YUIMAWARU株式会社(以下,ゆいまわる)は子どもがしたいこと,先生や保護者が期待したいことなど作業を「届けたい教育」とし,その作業の実現のためのコンサルテーションを行っています。これまでの実践からその関わりは,家庭と学校が安心して協働的に子どもの成長を支えるチームづくりを可能にし,対象児童だけでなく,クラスに所属する子ども達にも影響を与えてきました。そのことはこれまで教育現場が願ってきたチームとしての連携,先生のエンパワメント,親の安心,平等な教育の機会の提供,子どもの可能性の拡大など効果をもたらし,学校にOTが関わることが徐々にメインストリームになりつつあります。
現在,福祉型児童発達支援センターとして,福祉サービスの形態だけでなく,市町村とコラボレーションによる学校作業療法が始まっています。今回,ゆいまわるが行っている学校作業療法を紹介させていただくと同時に,OTだからこそできる学校作業療法の魅力と可能性についてお伝えできればと思っております。

仲間知穂(なかま ちほ)
YUIMAWARU株式会社 代表取締役
・琉球大学人文社会科学研究科人間科学専攻(博士前期課程) ・ライオンの子保育園 理事


 沖縄県の幼稚園・小学校において,教員が届けたい教育の実現に向けて支援を行なうことにより、子どもが学校生活を健康的に過ごすことをサポートするコンサルタントとして巡回相談を開始(2009年4月).平成28年1月作業療法士による学校訪問支援専門の事業所「こども相談支援センターゆいまわる」を開設.保育園・幼小中学校・特別支援学校等への作業療法士による訪問支援,教育関係者や支援者,保護者を対象とした研修,子育て相談,教育関係者との研究等活動を行っている.3児の母.

【YUIMAWARUとしての活動】
・学校作業療法(保育所等訪問支援事業)(H28年〜 沖縄県中部〜南部)
・市町村委託による幼少中学校への訪問支援(R2年〜南風原町)
・市町村委託による保育園・こども園への訪問支援(H29年~南風原町,R1~南城市,R2~嘉手納町)
・福祉型児童発達支援センター「こどもセンターゆいまわる」R2年8月

【主な教育機関の活動(平成27年~)】
・沖縄県教育委員会後援 インクルーシブ教育最前線フォーラム 基調講演・シンポジスト(H27)
・沖縄県中頭教育事務所 スクールソーシャルワーカー(H28年度)
・沖縄県教育委員会主催 家庭教育支援アドバイザー研修(3回)講師(H29,令和元年)
・県内小学校校内研修
・教育機関初任者研修
・保育所等訪問支援事業の説明・研修|金武町・嘉手納町・名護市(H28)沖縄市・南風原町(H29)
・厚生労働省副大臣への事業説明(H30)
・琉球大学・行政との産学官民連携人材育成プログラムのワーキンググループ(H30〜)
・学童保育機関 講師・訪問支援(H28〜)

【主な業績】
[論文]

​1.仲間知穂,酒井ひとみ:幼児の作業の可能化を目指す幼稚園教員との協働的アプローチ.作業科学研究,5(1):45-51,2011.
2.仲間知穂,酒井ひとみ:AMPSの結果の共有により具体的な支援を行っていけるようになった教員.AMPS事例集,4:72-78, 2011
3.仲間知穂,平良瑞枝,友利幸之介,長谷龍太郎:別支援教育における教員との協働的作業療法の実践.作業療法,32:86-94,2013
4.仲間知穂,松村エリ,上江洲聖,友利幸之介:保育所等訪問支援における巡回型学校作業療法.作業療法,37:427-433,2018

[書籍]

学校に作業療法を-届けたい教育でつなぐ学校・家庭・地域,クリエイツかもがわ,2019

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​後援

協賛

一般社団法人 鳥取県理学療法士会

一般社団法人 山陰言語聴覚士協会

社会福祉法人 鳥取県社会福祉協議会

公益社団法人 鳥取県西部医師会

公益社団法人 鳥取県看護協会

鳥取県介護支援専門員連絡協議会

一般社団法人 鳥取県介護福祉士会

一般社団法人 鳥取県社会福祉士会

鳥取県教育委員会事務局 特別支援教育課

SOI STANCE

【主な業績】
[論文]

​1.西方浩一,小田原悦子:障害のある子どもと母親の社会参加: Interactionの視点から,作業科学研究,14(1):31-40, 2020
2.西方浩一: 小児リハビリテーションの基礎知識(5) 子どもの学習活動を理解するための基礎知識, 日本肢体不自由教育研究会機関誌 (239), 52-55, 2019
3.西方浩一: 小児リハビリテーションの基礎知識(4) 障害を理解するための基礎知識, 日本肢体不自由教育研究会機関誌 (238), 50-53, 2019
4.西方浩一: 小児リハビリテーションの基礎知識(3)上肢・手指機能発達の基礎知識, 日本肢体不自由教育研究会機関誌 (237), 50-53, 2018

5.西方浩一: 小児リハビリテーションの基礎知識(2)粗大運動発達の基礎知識, 日本肢体不自由教育研究会機関誌 (236), 52-55, 2018

6.西方浩一: 小児リハビリテーションの基礎知識(1)リハビリテーションの基本: 教育との連携のために, 日本肢体不自由教育研究会機関誌 (235), 48-51, 2018

7.西方浩一:作業療法教育における情意領域の育て方,作業療法ジャーナル,47(4):317-322,2013

​8.西方浩一,小田原悦子:障害児の母親が経験する社会とは-母親の手記の分析から-, 作業科学研究, 6(1): 34-41, 2012

[書籍]

1.西方浩一: 姿勢運動と感覚の発達,食環境――姿勢・体幹,使用する食具,椅子,机について,摂食機能訓練3 自食訓練(手指の訓練,食具の使い方),「田村文誉・水上美樹・編: ダウン症の子どもの摂食嚥下ハビリテーション」医歯薬出版株式会社, 23-27, 77-82, 116-121, 2021年7月

2.西方浩一:治療への応用〜事例を通して〜,発達障害,「長﨑重信・監修,浅沼辰志・編集:作業療法学ゴールドマスターテキスト作業学 改訂第3版」,メジカルビュー社,東京,328-339,2021年2月

​3.西方浩一:「食べる力」を引き出そう,「道信良子・編:いのちはどう生まれ、育つのか―医療、福祉、文化と子ども」,岩波ジュニア新書 岩波書店,63-76,2015年3月

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